インフルエンザワクチンについて
対象:
医師、コメディカルの方々、製薬会社MR、医薬品卸MS、医療業界に興味がある人、医療業界志望の方
今年も製薬メーカーから入荷するインフルエンザワクチンが、9月末より流通しています。
昨シーズンは、製造株変更に伴う製造→検定→出荷の流れが大きくズレ込んだ為、製薬メーカー、医薬品卸、医療機関で大変な混乱が見られました。
偏在を避ける為に、厚生労働省が異例の通達を出すまでに至りました。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000177816.pdf
ここには、ワクチンの大量購入は、偏在を招き安定供給に支障をきたすことに言及し、
文書の(8)には
「接種シーズン終盤にワクチンを返品した医療機関等の名称について、公表することがあること」
と明確に記載しています。
ワクチンは、製造から市場に流通するまで多大な時間と労力がかかっています。
原液製造
↓
充填
↓
自家試験
↓
国家検定
↓
合格
↓
包装
↓
出荷
↓
流通(医薬品卸)
↓
この過程は、早ければ10ヶ月、かかるもの2年を要します。
したがって、市場の急激な需要の変化に対応することができない製剤なのです。
ワクチンについてはまた別記事で扱いたいと思いますので、インフルエンザワクチンに話を戻します。
インフルエンザワクチンの接種について、各自治体は高齢者助成を実施しています。
自治体によって時期が異なり、早いところは10月1日からの地域と、10月半ばくらいからの助成開始が多いようです。
その時期から、接種希望者が次第に増え、ピークは11月中旬頃となります。
接種による効果は、2週間後から3ヶ月と言われていますが、5ヶ月という話もあるようです。
したがって、例年の流行期12月〜2月末くらいまでの間にワクチンの効果を期待するのであれば、接種のピークは妥当な時期と言えます。
インフルエンザワクチン自体に懐疑的な意見を医師が発信しているケースもありますが、インフルエンザワクチンを接種することで、
発症リスクの低減
発症時の重症化・合併症予防
に充分寄与していることから、接種を推奨する医療機関がほとんどです。
では、皆接種したら良いじゃない、となりますが、
基本的に自費での接種です。
そして
流通する数には限りがあります。
ですので、医療機関との納入に関わる交渉が頻繁に行われるこの時期、自院のことだけでなく、地域の流通ついて理解をいただいた上で、当該医薬品卸とご相談いただけますと助かります。
昨シーズンと比べて、今シーズンはインフルエンザワクチンの数、流通は安心できると思っていましたが、実際蓋を開けるととんでもない、現場は一部混乱しています。
背景には、介護施設や高齢者住宅など、施設利用者の集団接種が毎年増加していることが起因しているようです。
今まで、インフルエンザワクチンなんて打ったことがないし、インフルエンザにすらなったことがない、なんていう元気な高齢者が施設に入所されると、施設内の流行・感染リスクを低減する為に接種を勧められる、という流れがあるようです。
インフルエンザワクチンは、前年実績に基づき製造・流通していますから、そのような動きがあちこちで始まると到底足りません。
民間に任せるのではなく、国が製造から数量のヒアリングまでしっかり関与して、必要な患者さんに行き届くようにしていただきたいものです。
ワクチンについては、言いたいことが山ほどありますので、今回はここで終わらせていただきます。
お目を通していただきありがとうございました。