激動の医薬品業界について考える

MS歴14年選手の現場観ブログ

医薬品業界の現状を確認

対象:

医療業界で勤める・志望している方、製薬メーカーの方、医薬品卸の方、調剤薬局経営者の方、薬剤師の方、医師、医療業界に興味がある方

本記事では医薬品業界の現状を私個人の観点で記しています。

 

医療業界の、とりわけ医薬品を取り巻く環境が劇的に変化しています。

 

いわゆるパラダイムシフトの真っ只中にいるのです。

 

その為、医薬品業界各社は、今後の方針について大きな舵取りが必要とされています。

 

なぜか?

 

要因は大きく3点あります。

社会保障費が限界

②世間の潮流(ルールの厳格化)

③医薬品流通のカテゴリーに変化

 

①年金・医療・介護から構成される社会保障費は、少子高齢化に伴う人口動態の変化と、スペシャリティ医薬品の増加による医療費の急激な増加に対して、医療に充てる税収や保険料では賄いきれず、限界の状況が続いています。

ですから、「薬価改定」「診療・調剤報酬改定」による適正化(値下げ)で、社会保障費の医療の部分を抑えようとしています。

(別記事で改めて解説します。)

 

②世間の潮流とは働き方改革」、「プロモーションコードの厳格化」です。

昨今の報道でもある通り、過重労働による自殺者が出る悲しい事件が今でも発生しています。企業は、従業員の就業時間の管理不徹底に着目され、ブラック企業という言葉で揶揄されるようになりました。

医薬品業界各社も多分に漏れず、働き方改革の大号令の下、厳格に就労管理がなされるようになってきました。

医薬品業界の営業は、主に医師、看護師、技師、薬剤師などの有国家資格者を対象に営業を展開しますが、当然先方の都合に合わせた時間に訪問をしなければなりません。

労働基準法に則った就労時間や有給休暇の取得を進めていくと必然的に、それ以前と比べ、仕事量や仕事の仕方を見直していかなければならなくなります。

 

いわゆる「効率化」です。

 

「効率化」はとても良い響きのように感じますが、現場ではサービスの低下を懸念する声が多くなりました。

 

さらにそこに追い打ちをかけるように、「プロモーションコードの厳格化」が進められてくるようになりました。

 

以前より製薬メーカーによる接待は禁止されていましたが、例えば講演会後の演者の先生との会食も規制対象として検討され、訪問時の面談の潤滑油として活躍していたノベルティグッズ(販促品、サービス品)配布も2019年1月より全面的に禁止になるそうです。

説明会時のお弁当についても、規制の対象として検討されているようです。

 

時間モノが極めて限定的になったのです。

 

③医薬品流通のカテゴリーに変化が起きています。

大きな変化は2点です。

1:先発医薬品(長期収載品)→後発品医薬品

2:スペシャリティー医薬品の上市

 

1:①で触れましたが、「診療・調剤報酬改定」の中で後発品使用に対する評価がなされるようになりました。

・後発品使用体制についての点数化

・一般名処方加算

それに加え、2018年10月より生活保護患者の後発薬使用の原則化が始まりました。

それらにより、特許の切れた先発医薬品(長期収載品)から後発医薬品への切り替えが進んだことで、

 

新薬が出せる製薬メーカー

新薬が出せない製薬メーカー

新薬流通を担える卸

新薬流通を担えない卸

 

これで、大きく収益格差が生まれてきています。

(こちらも別記事で触れます。)

 

2:スペシャリティー医薬品が次々と上市しています。

今まで治すことができなかった・治療薬の無かった疾患に、画期的な薬剤が開発され、厚生労働省により承認され、発売になりました。

 

象徴的なものとして、

C型肝炎薬のマヴィレット、ハーボニー他

抗がん剤ではオプジーボ、キイトルーダなど

が挙げられます。

寛解や、劇的な改善、延命ができるようになり、患者、家族のQOL(生活の質)向上に大きく寄与しています。

 

問題点は、それと引き換えに発生する薬代です。

例えば、C型肝炎治療薬の

マヴィレット配合錠(1日1回3錠)は

1錠 ¥24,180-

1箱(42錠) ¥1,015,568-

1人当たりの治療完結までの薬剤費

8週間服薬の方   ¥4,062,273-

12週間服薬の方 ¥6,093,410-

 

となります。

高いと感じるかもしれませんが、従来の治療は長い治療期間と、患者さん自身の精神的、肉体的苦痛が伴うものでした。

注射剤と経口剤での治療で、副作用も多く、効かない患者さんも多かったので、このマヴィレットやハーボニーのような経口剤のみの服用で、ウィルスの体内除去が飛躍的に成功し、治すことができるようになりました。

 

このように、今までの治療を一変させるくらいの画期的な薬剤をスペシャリティ医薬品」

そして、そのスペシャリティ医薬品は

別名「超高額医薬品」

と言われています。

さらに米国で承認され、本国でも「CAR-T細胞医療」の医薬品として承認を見通されている2種類の白血病治療薬「キムリア」は、オーダーメイド医薬品と言われ、薬価が約5,000万円になるのではないか、と言われています。

あまりにも高額な為、米国では効果が認められた場合に請求する「成功報酬型」の価格制度を取っています。

 

かなり話が脱線してしまいましたが、国の政策の意向や、医療の進歩により、流通上から医薬品カテゴリーの変化が見てとれるようになりました。

 

ここまでお話ししたことから、

社会保障費が限界

→公定価格である医薬品の値段(薬価)の引き下げ、国の政策意向による後発医薬品使用推進で、製薬メーカー、医薬品卸の収益が大幅に低下する。

 

②世間の潮流(ルールの厳格化)

→時間とモノが、極めて限定的になることから、販売推進機会が減少している。

 

③医薬品流通のカテゴリーに変化

→医薬品メーカーは、新薬を出せるか、新薬が出せないか、医薬品卸は新薬流通を担えるか、取り扱いすらできない卸か、これで収益格差が出てきます。

 

以上のことが、医薬品業界各社は、今後の方針・展開の舵取りが必要とされている所以です。

 

武田薬品が、シャイアー社を7兆円で買収を、進めていることが、この舵取りのひとつです。

 

医薬品業界のこのような現状を背景に、私たち医薬品卸のMSや製薬メーカーMRが、どのような活動をしていけば、今後の活路を見いだすことができるか。

 

そのようなことを今後記していく為に、今の自分たちの立ち位置をざっくりと確認致しました。

 

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こんなに長く書くつもりはありませんでした。

こんなボリュームで書いていったら、細く長く続けられません。

気楽に続ける為に、もっと軽い内容で続けていきたいと思います。

 

お目を通していただきありがとうございました。