11月製品別売上高ランキング+思うこと
対象:ALL
※本記事は私が医薬品卸として仕事している中で感じている視点での見解によるものです。
先月の記事に引き続き、
データサービス会社エンサイス社が、11月単月の国内医療用医薬品の製品別売上高ランキングを発表しました。
販売会社である医薬品卸としては大変関心が深いものです。
本記事では、売上高ランキングと、そこから思うことについて記します。
では、ランキングは以下の通りです。
[ ]内は対10月順位変動
3位:リリカ(中枢神経用剤)ファイザー[↑4]
4位:マヴィレット(抗ウィルス薬)アッヴィ[↓3]
5位:ネキシウム(消化性潰瘍剤)第一三共[→]
6位:キイトルーダ(抗悪性腫瘍剤)MSD[→]
7位:リクシアナ(血液凝固阻止剤)第一三共[↑8]
8位:レミケード(他に分類されない消化器官用薬)田辺三菱[↑外]
9位:イグザレルト(血液凝固阻止剤)バイエル[↓7]
着目したのは、やはり血液凝固阻止剤である
リクシアナ
イグザレルト
です。
リクシアナは8位から7位に上昇
イグザレルトは7位から9位に下降
という結果になりました。
その金額差は2億です。
2億という金額の大小はともかく、両剤共に病院、開業医で大変多くの患者さんに処方されています。
患者さんが安定している状態であれば、病院の処方日数は90日やそれ以上の長期日数で処方されることもありますし(もちろん逆もしかり)、開業医でも短いと14日、長いと90日処方と月をまたぐ日数で処方されています。
したがって、年間順位に直結しませんから、単月金額順位で一喜一憂するものではないでしょう。
しかし、肉薄している状況ということは十分理解できますね。
以上の薬剤は、医療用医薬品売上高ランキング10に入るほどのものですから、それぞれの製薬メーカーさんの屋台骨となっていることは間違いありません。
来年2019年10月の消費税増税に伴う薬価改定で、どれだけ適正化*(引き下げられるか)されるか、製薬メーカーだけでなく医薬品卸も戦々恐々としています。
なぜならば、
その半年後の2020年4月にも診療報酬改定と同時に薬価改定があるからです。
次回の改定には、それよりもさらに適正化(引き下げられる)されることが、今のところ決まってしまっています。
*すべてが引き下げられるとは限りません。
薬価が引き下さげられると、同じ薬剤でも価値が下がってしまう為、屋台骨である主力製品の維持・向上させなければならないと同時に、新たな主力製品の創薬を進めなければなりません。
筆舌する以上に容易じゃないことだと理解します。
ですから
2018年4月
2919年10月
2020年4月
と3年連続の薬価改定が製薬業界に与える影響は甚大です。
それは医薬品卸、また購入側の医療機関にもその甚大な影響が及ぶことを意味します。
薬価改定は、市場実勢価格(どれくらいの価格で市場に出回っているか)を基に定められます。
安く売られれば売られるほど、薬価の下げ幅が大きくなるということです。
したがって製薬メーカーは、医薬品卸が必要以上に安売りをしないように、仕入れ価格を高く設定します。
すると、医薬品卸が医療機関へ販売する価格も、それに基づいた価格での交渉を余儀なくされます。
その結果
医薬品卸は、
仕入れ価格と納入価格の差益
医療機関は、
公定価格である薬価と納入価格との差額からさらに消費税額を差し引いた差益
これらの差益が著しく低下してしまうのです。
そのことから、
医薬品卸側の話をしますと
今までのように納入差益や製薬メーカーからのリベートだけに頼ると事業継続が間違いなくできなくなります。
ですから、販管費抑制だけでなく別の形での利益を生み出すことが急務です。
実際、各卸はそれぞれの方向性を持って戦略を進めています。
その戦略が功を奏すか否かで、淘汰されていきます。
再編の足音もしてきています。
それが医薬品卸の現在です。
売上高ランキングの話から逸れてしまいましたが、こういった話題に触れることで改めて、医薬品を取り巻く環境が非常に厳しくなっていることを実感するのです。
最後までお目を通していただきありがとうございました。